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ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 [09展覧会感想]

上野の国立西洋美術館で開催されている「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」を観に行きました。
「ルーヴル美術館の所蔵品展は、これまで日本でも何度か開催されてきました。大きな美術館の所蔵品展をおこなう場合、時代と国とで区切るというのが定石ですが、今回は、やや変則的で大胆な構成になる予定です。この度の展覧会の範囲は「17世紀のヨーロッパ絵画」なのですが、一般に予想されるような国別の組み立てではなく、17世紀ヨーロッパ絵画を三つの大きなテーマで分類し、この時代のヨーロッパ絵画を横断的に検証してみようと考えているからです。その三つとは、「黄金の世紀とその陰」、「大航海と科学革命」、「聖人の世紀における古代文明の遺産」です。そこでは、宮廷的な世界と貧しい農民の姿が対置され、あるいは、自然科学の発達と拡大する世界がもたらした新たな社会の諸相が概観され、さらに、宗教改革以後のキリスト教社会がどのような宗教図像を生み、また、新たな規範を確立していったのかが探求されていきます。レンブラント、フェルメール、ルーベンス、プッサン、クロード、ラ・トゥール、ドメニキーノ、グェルチーノ、ベラスケス、ムリーリョといったルーヴルを代表する画家たちの重要な作品が出品される予定です。」

表 裏

~展示構成~
Ⅰ.「黄金の世紀」とその陰の領域 Ⅱ.旅行と「科学革命」 Ⅲ.「聖人の世紀」、古代の継承者?
 
フランス・ブルビュス(子)《マリー・ド・メディシスの肖像》は312×185.5cmという巨大な肖像画。ドレスの青色はフェルメール・ブルーで有名なラピスラズリだそうだ。さすが王妃マリー・ド・メディシス、高価なラピスラズリを惜しげもなく使っている。ちなみに、王冠に輝くダイヤモンドは35カラットだそうだ。。。(-_-;)こーゆー金の使い方するから幽閉されちゃうんだよ。。。(*_*) アチャ!
レンブラント・ファン・レイン《縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像》はいつものようにつるつるテカテカ・・・と思ったら、金色のクサリの部分だけ厚塗りで盛り上がっていた!筆の後を残さず薄塗りで表面を滑らかに仕上げ、鏡のように綺麗に光が反射することをよしとしていた時代。レンブラントの他の作品もほとんどがそのように仕上げられているが、稀にこのように意図的に部分を立体的に仕上げたものがある。やるじゃん、レンブラント!ちょっと角度をかえてみると、クサリの部分がキラキラと光っていた!なんかゴージャス系。しかも自画像。。。(^_^;)

やはり大本命はフェルメール♪

ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》は今展覧会の目玉の一つ。この展覧会でこの作品の前が一番混雑していた。といっても、私が鑑賞したのは会期前半のためそれほどでもなかった様子。せいぜい四重か五重程度、展示室内を自由に移動できましたし。小さな作品のため会期中盤以降は大混雑で大変なようです。。。ちょっと並んで待てば最前列で鑑賞できました。本当は止まってじっくりと楽しみたかったのですが、必殺のカニ歩き♪肉眼で見ることが出来る限界ぎりぎりの範囲までの光の粒を確認。感動の瞬間!!そしてとろけるような流れるような、それでいてふんわりとした感じの不思議な糸を楽しむ。やはり、カメラ・オブ・スキュラから何らかの影響を受けているのだろうか。レンズの絞りを開いて撮影した時のようにちょっとぼけぼけした感じ。次に、女性の表情。手元に集中している感じが良く伝わってくる。髪型も素敵。ほっぺの丸い優しい感じがとても可愛い♪(^_^)フェルメールの作品はカンヴァスの左側から光が差し込む作品が多い中で、この作品は右側から。私が鑑賞したフェルメール作品はこれで11点となるが、風景画である《小路》を除き、今まで鑑賞した作品はすべて左だった。やっと出会えた右側作品♪O(≧∇≦)O イエイ!!その11点にはこの作品との関連性が指摘される《ヴァージナルの前に座る若い女》というちょっと怪しい作品が含まれているので、これで正々堂々と二桁鑑賞といえるぜっ!( ̄ー ̄)vあらためて図録で見比べてみたが、はっきり言って、別格。《ヴァージナル~》はいろいろ議論されているが、フェルメールの真作だと仮定すると、もしかして未完成なのではと思えてきた。更に筆を入れていけば質の高い作品として仕上がっていったのではないだろうかと、ちょっと思えてきた。事情があって売りを急いだのか、未完のまま放置されていたものに誰かが筆を入れて売りに出したのか。。。あくまでも真作だとしたらという仮定のお話。

ル・ナン兄弟《農民の家族》フェルメールの向かい側には、ル・ナン兄弟《農民の家族》。ル・ナン兄弟って、名前は知ってるけど作品を見るのはたぶん初めて。(この1ヵ月後、国立新美術館のルーヴル展でも見ることになったが。)温かく優しい光が家族を照らす。カンヴァスの左奥にあるのは暖炉だろうか、火が見える。その火が画面奥の柱に寄りかかる女の子を照らす。頭巾を被った可愛い女の子。頭巾からちょろっと見える表情がとても優しく、また、頭巾と共にその光の描写が素晴らしい。左下にはチワワかな、ちょこんと可愛い犬が描かれている。おっ、猫もいる♪(^_^)図録の解説によると、「パンとテーブルの上の塩は、老婦がグラスに注いだワインと同様、最後の晩餐を象徴する食べ物であり、一方、光はキリストの託宣という精神的な啓示を想起させる。・・・貧しく困窮した人々はキリストの姿を連想させると説かれており、対抗宗教改革のカトリックの精神性において特別な場所を占めていたことを思い起こす必要がある。」とのこと。質素だけど心温まる感じの穏やかな作品という印象を持ったが、実は最後の晩餐的な暗く冷たいものを秘めているようだ。これだから宗教画は難しい。。。(-_-;)
帰宅後、図録を見てビックリ!!左端に人の横顔。。。見事に見落としてた。じっくり二回りもしたのに。。。いったい何を見てたんだ???llllll(-_-;)llllll ずーん

17世紀フランドル派《襲撃》は青みがかった遠景が幻想的でとても綺麗な風景画。と思いきや、タイトルにあるように画面手前では盗賊が襲撃している場面が描かれている。襲われた人たちは旅人らしい。命乞いをしているが、この様子からすると・・・(; _ ;)ううう
ペドロ・ヌーニェス・デ・ビリャビセンシオ《ムール貝を食べる少年たち》はムリーリョの影響があるようだ。「ここにあるイメージは確かに貧困や飢餓を示唆している。それはぼろ着、地面で食べる簡素な食事、拾い物を疑わせる食材などによって明らかに示されている。」とのこと。その割にはかなり健康的。ペドロ・ヌーニェス・デ・ビリャビセンシオ、早口で噛まずに10回言えたら、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールも早口で噛まずに10回言えるようになるかもしれない。。。(=^^=) ニョホホホ
ピエール・デュピュイ《葡萄の籠》はカゴにたくさんのブドウが入っている。というか溢れちゃってる。うまそ~、一房、いや、せめて一粒。。。(*^¬^*)
サミュエル・ホフマン《果物と野菜のある静物》で右のカゴにあるのは収穫してきたばかりだろうか、枝についたままのブドウやサクランボ、ラズベリー等。左のお皿にはおいしそうなサクランボがたくさん盛られている♪キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー奥のバケツにはアスパラガスの束等、野菜。そして、何故か画面手前、ど真ん中にはセロリ・・・ヒイィィ!!(゜ロ゜ノ)ノちなみに私はセロリが大嫌いで一口も食べられません。。。絵からにおいがしなくてよかったとあらためて思いましたよ。(^_^;)ははは・・・

ディエゴ・ベラスケスとその工房《王女マルガリータの肖像》は無表情というか、ちょっとふくれっ面。この時代の王女の肖像画は、現在のお見合い写真のようなもの。それも政略結婚のためのもの。。。(-_-;)「この絵は、ふたつの点から、旅行と、ヨーロッパにおける移動のテーマを示している。まずは、当然、国際的市場における作品注文という点である。・・・宮廷肖像画は、その相当数が、ヨーロッパ各地に発送されるために作られた。支配王朝は絶え間なく、その構成員の肖像画を送り合っていたからである。したがって、芸術家たちの旅行は作品そのものの流通と平行して、あるいは一致して行われている。また、描かれた人物が旅することを余儀なくされる場合もある-この作品の場合、王女は国を去る運命にあった。」とのこと。マルガリータちゃんの肖像画は昨年国立新美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密」展でも来日していた。そして、この秋に国立新美術館で開催される「THE ハプスブルク」展でも。どうせなら、この作品も国立新美術館の「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」で展示すればよかったのに。まさか、この作品は工房によるものだからこっちにしたとか、そんな理由じゃないよね。。。(^_^;)それにしても、マルガリータちゃんは日本に旅行するのが好きなのかな?

クロード・ロラン《クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス》クロード・ロラン《クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス》の建物や奥行きはさすがクロード・ロランといった感じ。場面は日没時の港、ホメロスの『イリアス』第1章から引かれているとのこと。なんだかよくわからんけど、単なる風景画ではなく、ギリシャ神話か何かの一部ということは理解できた。逆光によってもたらされるコントラストや大気の質感が見事に表現されている、とても見応えのある作品。図録の解説によると、「・・・クリュセイスが家族の元へ返されることは、トロイア人に対する戦争を継続させることになるからである。」とあるが、画面手前の人々は牧歌的でとても穏やか。夕日の温かい光が照らす。潮の香りが優しく漂うなんとも不思議な作品♪(^_^)
ヤーコブ・ファン・ライスダール《嵐》ヤーコブ・ファン・ライスダール《嵐》はとても楽しみにしていた作品。17世紀オランダ風景画の巨匠、ライスダールが海を描いた作品は初めて。ライスダールの作品というと、山や森、小川や渓流といった感じで、静けさや荒々しさは感じるものの、潮の香りがするイメージは全くといっていいほど持っていなかった。そういう意味でもとても新鮮!!迫ってくるような海の荒れ狂う激しさ、厚い雲の重苦しさはとても見応えがある。沖にある船の傾いた様子から全てをなぎ倒すかのような激しい風も感じられる。「パイレーツ・オブ・カリビアン~ワールド・エンド~」の壮大な対決シーンを思わせるものがある。どちらかというと、潮の香りというより、口の中に海水が入っちゃってしょっぺぇ~って感じ!?(^_^;)この後に常設展示で鑑賞したライスダール作品が、どことなくいつもと違って見えた。ヨアヒム・ウテワール《アンドロメダを救うペルセウス》大好きで見慣れている作品だけど、色使いや構図等とても興味深い。やっぱり、ライスダールっていいなぁ。ヾ( ̄ー ̄)ゞ
ヨアヒム・ウテワール《アンドロメダを救うペルセウス》はとてもインパクトのある作品。巨大な裸のお姉さんがどど~んと。(^_^;)足元には骸骨や貝殻が無造作にゴロゴロ。海では・・・馬 いや、よく見ると翼があるからペガサスかな。そのペガサスにまたがりペルセウスが怪獣と闘っている。海にいる怪獣はだそうだ。この中国風。第一印象としては、ギュスターヴ・モローの作品が思い浮かんだ。モローほど装飾的ではないけれど。アンドロメダやペルセウスというと、真っ先に星空が思い浮かぶ。実際にはどのような人物(いや、神か。)なのだろうか、そういえば全然知らない。。。(-_-;)

ドメニコ・フェッティ《メランコリー》ドメニコ・フェッティ《メランコリー》はどっかで聞いた名前。この憂鬱な感じ・・・思い出した![ひらめき]Bunkamuraで観た奴だ!2007年の「ヴェネツィア絵画のきらめき展」のときに鑑賞した作品。しかもタイトルも同じ。今回の作品は、「ドメニコ・フェッティの作品の中で最も有名な1枚であると同時に、最も謎に包まれた1枚でもある。」とのこと。また、「・・・悔悛のマグダラのマリアが現世の虚栄について瞑想しながら、ただひたすら頭蓋骨を凝視するという主題を想起させる。」とのこと。うんうん、確かにその通り。第一印象はマグダラのマリアだった。息苦しくなるような重苦しさと深い精神性。バルトロメオ・マンフレディ(帰属)《羊を連れた洗礼者ヨハネ》171×128cmという大きさからくる圧迫感によるものではない。何を思い、何を考え、何を悩んでいるのだろうか、とても気になる。こーゆー作品を前に思いを馳せるのが結構好きだったりする。(^_^)
また、ドメニコ・フェッティとともに深い精神性に包まれ、感情移入した作品がバルトロメオ・マンフレディ(帰属)《羊を連れた洗礼者ヨハネ》。05年のジョルジュ・ド・ラ・トゥール展で鑑賞したジョルジュ・ド・ラ・トゥール《荒野の洗礼者聖ヨハネ》に通じるものを感じた。カラヴァッジョ風のコントラストの強いこの作品はラ・トゥールのそれとは明らかに異なるが、心に響くというか、精神に訴えかけてくるものがとてもよく似ているように感じた。

シモン・ヴーエ《エスランの聖母》シモン・ヴーエ《エスランの聖母》もとても楽しみにしていた作品のひとつ。シモン・ヴーエの描く女性はとても綺麗で見惚れてしまう。作品の保存状態がとてもよいのだろう、聖母の衣の赤色、青色、黄色の発色がとても良く、また、グラデーションも美しい。聖母子が暗闇に浮き上がるようでいて、また、内面から柔らかな光を発しているようにも見える。聖母の優しく穏やかな表情や幼児のぷくぷくした感じが緻密で繊細な描写によって見事に表現されている。
ピエトロ・ダ・コルトーナ《聖母の誕生》はちょっと珍しい主題の作品。タイトルにあるように聖母マリアの誕生場面。たぶん鑑賞するのははじめてだと思う。一般的な聖母子は、聖母マリアと幼児のイエスだが、ここでは聖母アンナと幼児の聖母マリア。しかも、この作品では、聖母アンナは左奥で横たわっており、付き人が聖母マリアをあやしている。聖母アンナの頭上には光の輪のようなものがあり、聖母マリアの頭上には星のようなものがある。付き人のお姉さんがとても綺麗♪青い服のお姉さん二人、特に右側の横顔のお姉さんがお気に入り♪O(≧∇≦)O イエイ!!

カルロ・ドルチ&ラ・トゥールの展示は圧巻!!

フェルメールと共に今展の大本命としていたのが、カルロ・ドルチ《受胎告知 天使》《受胎告知 聖母》ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工ヨセフ》。まさか並べて展示されるなんて考えもしなかった!!Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!後半の展示では、やはりこの一連の作品のところが混雑していた。カルロ・ドルチ《悲しみの聖母》という素晴らしい作品がこの開催会場である国立西洋美術館に所蔵されている。そして、目と鼻の先である東京国立博物館にも。東博の《聖母像(親指のマリア)》という作品は滅多に展示されることがないのだが、一度だけ鑑賞したことがある。作品のコンディション等も含め、西美の作品の方が素晴らしいと思う。今回展示されているこの2点もまたとても素晴らしいもの。西美の作品と比べると、その時の気分次第で一番のお気に入りがころころと入れ替わりそうなほどに。ヾ( ̄ー ̄)ゞこのルーヴルの2点は対になっているそうだ。《受胎告知 天使》は穏やかで優しい表情、髪の柔らかな質感や流れ、衣の装飾等、繊細で緻密な描写がとても見応えがある。とても装飾的《受胎告知 聖母》もまた穏やかで優しい表情をしている。こちらは、とてもシンプル。故に青いマントの襞や肌の質感、光背等、グラデーションの美しさに魅了された。《受胎告知 天使》は美しい女性の肖像画という感じでほとんど宗教性を感じないが、《受胎告知 聖母》はまさに聖母、心に染み入るような深い精神性を感じた。
 カルロ・ドルチ《受胎告知 天使》 カルロ・ドルチ《受胎告知 聖母》 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工ヨセフ》
【左】 カルロ・ドルチ《受胎告知 天使》
【中】 カルロ・ドルチ《受胎告知 聖母》
【右】 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工ヨセフ》
《大工ヨセフ》はラ・トゥールの代表作の一つ。05年の回顧展ではラ・トゥールの工房のものと思われる質の高い模作が展示されていた。そのとき、「ルーヴルめ、けちったな。真作貸せよっ!」って最初は思ったが、模作の素晴らしさに唖然とし、模作で満足していた。どうせド素人の私には真作と模作の区別なんかつかないし。(^_^;)ルーヴルを代表する作品のひとつでもあり、大規模な回顧展ですら貸し出してくれなかった作品。過去に来日済みということで、正直、日本で観れるなんて思っていなかった。もしかしたらラ・トゥール展の企画時、この展覧会の構想が既にあがっていたために2回目となるこの作品ではなく、《ダイヤのエースを持ついかさま師》が貸し出されたのかもしれないと、今となっては捉えることもできる。「・・・このブザンソンの模作は、戦後間もない1954年「フランス美術展」(東京国立博物館)に出品されたが、その後1966年にはルーヴル所蔵の真作がやはり「17世紀ヨーロッパ名画展」(東京国立博物館)で公開されている。(2005年『ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展』図録 P90《大工の聖ヨセフ(ルーヴル美術館所蔵作品の模作)》の解説より)」
さて、今回展示されている作品。もの凄いオーラがある。とても静かで穏やか。この二人が何を話しているのかはわからない。会話はないのかもしれない。しかし幼子イエスを見つめるヨセフの瞳にもの凄い力を感じる。また画面全体に緊張感がみなぎる。そしてラ・トゥールの代名詞とでもいうべき蝋燭の明かり。そのハイライト効果(いわゆる白とび)によってイエスの表情がとんでしまっているというか、無表情に近いように感じる。血の気が引いているようにもみてとれる。十字架を暗示するかのようなヨセフの大工道具とともに、その後の運命を受け入れる覚悟ができているか問うているようにもみえる。それほどヨセフの瞳には強い眼力を感じる。イエスの手を透かす蝋燭の光は繊細で素晴らしい。爪が光を反射する様子も緻密に描かれている。ヨセフの腕や足、衣服の描写等、光の描写が本当に素晴らしい。人物だけでなく足元の大工道具等も含め、細部までとても見応えがある。この作品を鑑賞している時、近くにいたおばさんたちが、「可愛い女の子ね~♪」「素敵ね~♪」と話していた・・・Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!い、いや、ここに描かれているのは女の子じゃなくて、イエスさまですから。。。神の子だから男女を超越した存在!?(^_^;)ははは・・・やっぱり、《大工ヨセフ》より《大工の聖ヨセフ》のほうはシックリとくる。『聖』が入るだけで、あまり詳しくない人でも、それとなく描かれている場面についての察しがつくし。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールについてとても興味深い記述があったのでちょこっとご紹介。
「・・・明るい夜に慣れた現代の我々にとって、遠い過去の夜がどれほど暗かったか、暗さに対する人々の恐れ、不安がどれほどのものであったかは想像するしかない。聖書によれば、大地ははじめ闇と混沌の支配するところであったが、『光あれ』の神の一言でこの世に光がすなわち秩序が生まれた。しかし、古代、中世にあって昼はともかく、夜ともなれば田舎はもちろん、都会でも家の外はほとんど漆黒の闇。どうしても外出となれば、ジョゼフ・コンラッドの小説のような“闇の奥”をさまようことになろう。家の内部もローソクの灯りだけではいかにも心もとない。ローソクの揺れ動く光と、やがて燃え尽きるはかなさは、人々に命の短さを、危うさを、“風前のともしび”連想させたことであろう。ローソクが砂時計と共に人生のはかなさ、空しさ(“ヴェニタス”)のシンボルとして後の静物画に頻繁に登場するのも不思議はないが、夜の画家、ローソクの画家として知られるジョルジュ・ド・ラ・トゥールにおける幼いキリストや父ヨセフ、あるいはマグダラのマリアを照らすローソクの光は明らかに誇張されている。しかしここでのローソクがただのローソクでなく、彼らの霊魂を照らすシンボリックな、あるいは霊魂から放射する形而上的な、精神の光であることを思えば、その異様な明るさも理解できよう。(2006年『大エルミタージュ美術館展』図録 P25より)」
 カルロ・ドルチ《悲しみの聖母》(国立西洋美術館蔵) ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《聖トマス》(国立西洋美術館蔵)
【左】 カルロ・ドルチ《悲しみの聖母》(国立西洋美術館蔵)
【右】 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《聖トマス》(国立西洋美術館蔵)
    ※奥はフィリップ・ド・シャンパーニュ《マグダラのマリア》

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《6人の人物の前に現れる無原罪の聖母》バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《6人の人物の前に現れる無原罪の聖母》も今回とても楽しみにしていたもの。ムリーリョの描く聖母は本当に美しい♪(^_^)表情はもちろん、髪の流れから衣の襞までとても見応えがある。背景というか、空の暖かな色合いが、聖母の優しさや温かさを引き立てているように感じる。「・・・聖母は華奢な乙女として描かれ、跪くような仕草で、三日月の上に身体を置いており、魂の高揚をかき立てるのに相応しい表現となっている。」とのこと。三日月に乗ってたんだ・・・(@_@)そういえば作品の解説があったような気もするけど、人が多かったから作品名すら確認せずにスルーしちゃったような。。。作品はじっくりと見たけど。172×298cmというとても大きな作品。にもかかわらず、それほど広くない展示室にはソファーが置いてあり、あまり後ろに下がれない。。。(T_T)空いている展覧会ならば、座って見上げるように鑑賞することが出来て理想的な環境なのかもしれないが、これだけの作品群なのだから混雑することは予想できたはず。天使を数えつつじっくりと鑑賞していたら、けっこう首にきた・・・(^_^;)

ウィレム・ドロスト《バテシバ》ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオラ《聖ウエスタキウスのいる風景》は一筋の光があたかも射抜くかのごとく聖エウスタキスを照らす。その光は丘の上にいるシカの角のあたりから発せられている。とても綺麗で見応えのある風景画のようだが、全体的にコントラストが強く、ドラマティックな演出という感じで、単なる風景画ではないということがはっきりとわかる。
ウィレム・ドロスト《バテシバ》は17世紀オランダで描かれた裸婦像の中で最も美しいもののひとつで、この画家の傑作でもあるそうだ。イヤリングが垂直ではなく斜めに描かれているのは、彼女が振り返ったところを、動きを表現したものらしい。いろいろと複雑で難しい解釈がされているが、とても綺麗なお姉さんであることには間違いない。(^_^)ドロストの師であるレンブラントも同年に同じ主題の作品を描いており、その作品もルーヴルに所蔵されているそうだ。だったらそれも持って来いよ。。。(-_-;)

17世紀ローマ派《聖ペテロの口述をもとに福音書を記述する聖マルコ》はとても迫力のある作品。今にもカンヴァスから出てきそうというか、自分がその場面に立ち会っているというか、まさに目の前で繰り広げられているといった感じ。大胆かつ繊細な描写は、文字通り頭の先から足の先までとても見応えがある。ここで描かれているのはタイトルにあるように聖ペテロの話を聖マルコが記録している場面。聖ペテロは何かを指し示している。その先に何があるのだろか、ちょっと気になる。
グェルチーノ《ペテロの涙》ミシェル・コルネイユ(子)《天国の栄光(ピエール・ミニャールの原作に基づく)》「ピエール・ミニャールに最も近い協力者であるミシェル・コルネイユ(子)の手になるこのグリザイユは、半球形構図を円形の平面構図に改変した。」とのこと。褐色と灰色の作品はとても神秘的。大理石彫刻のよう。うっ、目がまわる・・・(+_+)
グェルチーノ《ペテロの涙》は見ているこっちも悲しくなるような作品。二人の衣の鮮やかな色彩が印象的。特に聖母の青色と赤色はその質感と共にとても見応えがある。これがこの展覧会のラストを飾る作品。会場を去るのが惜しいという後ろ髪をひかれるような気持ちがそのままこの作品とだぶる。本当に名残惜しい。。。

いわゆる一点ものの展覧会が何回も開けちゃいそうなほどの豪華なラインナップ。よくぞまぁこれだけの作品を貸し出してくれたものだと。章立てが曖昧でただ持ってきただけ展に近いものはあるけど。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工ヨセフ》は国立新美術館の「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」で展示した方が良かったのではないだろうか。そして、こちらには《灯火の前のマグダラのマリア》《松明のある聖セバスティアヌス》を。ちょこっと展示場所をいじれば流れをきらず違和感なく鑑賞できるし。そもそもこの展覧会は流れなんてあってないようなものだし。。。
「この展覧会、何かが微妙に足りないなぁ。。。」と疑問に思っていたのだが、この記事を書いていてやっとわかった。マグダラのマリアを主題としたものが一つのない。これだけのラインナップにもかかわらず。図録をざざぁ~っと捲ってみると、一応、フランス・フランケン(子)《キリストの受難》という作品で十字架の根元部分で悲嘆にくれる姿が小さく描かれ、またミシェル・コルネイユ(子)《天国の栄光(ピエール・ミニャールの原作に基づく)》のゴチャゴチャとした中にも小さく描かれていた。聖人を描いた作品の中にマグダラのマリアを直接描いたものが1枚あっても良かったのではないかと思う。普段はそれほど気にならないが、ラ・トゥールの作品が来ているとやはり意識してしまう。

・図録:2500円(日本語版) 4000円(日仏版)
・音声ガイド:500円

公式サイト(http://www.ntv.co.jp/louvre/


国立西洋美術館



国立西洋美術館(http://www.nmwa.go.jp/index-j.html


超気合の入ったチラシ。自信満々。
louvre001.jpg louvre002.jpg
たぶん表はフェルメールのチクチクお姉さん♪、たぶん裏はレンブラントの自画像。
louvre003.jpg
※クリックすると、別ウィンドウで超特大画像が表示されます。
中は見開きで全71点の画像が掲載されています!!キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー

【東京展】 国立西洋美術館 2009年2月28日~6月14日
【京都展】 京都市美術館 2009年6月30日~9月27日

IMG_6613_900.jpg
【左】 ルーヴル美術館展の図録
【右】 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展の図録

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(国立西洋美術館:2005) 
感想記事(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2005-03-29

テレビ東京:美の巨人たちhttp://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工の聖ヨセフ》
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/090228/

ルーヴル美術館展01 ルーヴル美術館展02


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  • 作者: 小池 寿子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/05/24
  • メディア: 単行本



夜の画家 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

夜の画家 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

  • 作者: ピエール ローザンベール
  • 出版社/メーカー: 二玄社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 大型本



フェルメール  ――謎めいた生涯と全作品  Kadokawa Art Selection (角川文庫)

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  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/09/25
  • メディア: 文庫



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コメント 16

いっぷく

読み応えありますね、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品はそれほど多くないのにルーブルでは数点(6作品だったか)しか見られないですね。
たしかナント美術館やアメリカに行かなければ見られない作品も多くて
ラ・トゥール作品をもっと見たくても難しいところがあります。
カルロ・ドルチもじっくり鑑賞したいですね。
by いっぷく (2009-06-12 05:49) 

TaekoLovesParis

もう明日で終わりですね。今から出かけるので、明日ゆっくり読んでコメントします。
by TaekoLovesParis (2009-06-13 14:48) 

りゅう

○いっぷくさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
久しぶりに頑張って書きました!
おそらく今年一番の思い出深い展覧会になると思います。(^_^)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品は本当に見応えがありますね。
会期前半に出かけてよかったです♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
ちなみに05年の回顧展では真作が20点程展示されていました。
カルロ・ドルチさんの回顧展も開催されないかな~(^_^)

○TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
いってらっしゃ~い♪(^_^)/
くれぐれも飲みすぎにはご注意ください。

○ぽんこさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○miyokoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○イリスさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○shinさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-06-14 03:28) 

kuwachan

おはようございます。
素晴らしい鑑賞記ですね~!
先日観た展覧会が甦ってくるようでした。
by kuwachan (2009-06-14 08:03) 

りゅう

○kuwachanさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
今年に入ってから更新そのものをサボっていましたので、
久しぶりに頑張って書きました。(^_^)/
展覧会の感想記事が4つたまっていますが、
また手抜き感想に戻るでしょう♪(^_^;)
by りゅう (2009-06-14 22:48) 

りゅう

○りんこうさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-06-14 22:49) 

雅

いやぁ、これは行きたいと思ってたんですけどね。
結局行けずじまいだった(T_T)
またりゅうさんの記事見て行った気になっておこうっと。
by (2009-06-15 21:14) 

りゅう

○雅さん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
85万4233人だそうです。
90万は突破すると思ったのですが、
阿修羅さまに10万近く差をつけられちゃいましたね~ハハハ♪ (*’▽’)
京都は上野ほどの混雑ではないと思います、
夏休みに京都はいかがでしょう?ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2009-06-17 21:33) 

りゅう

○空さん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-06-20 22:34) 

pistacci

だいぶ前に見たので、記事を読みながら、あぁ、これもあった、あれもあった、と、思い出しました。改めて、日本にいながら、これらの絵が見られるって、幸せなことなのねと、思いました。
ローソクの光=精神の光、に、ものすごく納得しました。
by pistacci (2009-06-20 22:51) 

りゅう

○pistacciさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
作品の質も人出も本当に凄い展覧会でしたねー!
ラ・トゥールの描く蝋燭は、はかなくもあり、力強くもあり、そして神秘的でもあり、とても深い精神性を持っていましたね。見応えありました♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2009-06-20 23:22) 

laysy

ラトゥールは大好きです〜美術の教科書で見たときからかも…
暗闇の中にフワっと浮かぶ人物が美しいですよね!
過去の記事も読ませて頂きましたが、好きなものがあって、それを思いのままに表現出来る、りゅうさんはとても素敵です。
ムリーリョの柔らかな明るい表現も、ベラスケスのマルガリータも
好きです〜カルロ・ドルチは、神秘的で綺麗ですね。
詳細がよく解ってとても参考になりました。
私も観たかった…少しは美術展チェックしなくちゃ〜
近所で良いイベントがあっても見のがしてるかも…
問題は…最近、記憶力も集中力も体力も無いこと…
まずは体力づくりでしょうかね?
by laysy (2009-06-21 13:45) 

kumimin

結局、ルーブル美術館展どっちも行けなかったんです(T T)
国立新美術館でやっていたのは大阪でも見られるから実家に帰ってみようかなあ?9月までに行けたら。
残念だったのでりゅうさんの所で鑑賞させていただきました。
by kumimin (2009-06-21 14:33) 

Tak

こんばんは。

ショップで売っていた
フェルメールの眼鏡ふき
これが優れモノでした。

しかし最後の方はとんでもない
人の多さでしたね~
by Tak (2009-06-22 17:05) 

りゅう

○laysyさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
この展覧会は有名どころがどど~んと並んだ凄い展覧会でした。
相変わらずぐだぐだな文章で恥ずかしいです。。。(。-_-。)ポッ
ブログを始める前は漠然と鑑賞していたため片っ端から忘れていきましたが、
ブログを始めてから作品と積極的に向き合うようになり、作品リストにも書き込みをするようになりました。
そのうち、もっと見たい!もっと知りたい!!という気持ちが強くなり、図録にも目を通すようになり、いろいろ調べるようにもなりました♪(^_^)
また、ネットを通じていろいろなことを教えていただき、
刺激を受け、楽しみ方が広がりました♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ

○kumiminさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
カルロ・ドルチさん見応えありましたよ♪
もちろん、フェルメールもラ・トゥールも。
こちらのルーヴル展は京都に巡回します。
大阪に巡回するルーヴル展とともにハシゴされてはいかがでしょう?

○Takさん、TB&コメントありがとうございます(^o^)丿
マカロンといい、今回のショップは気合入ってましたね~
カルロ・ドルチの栞を購入しようかどうしようかかなり迷いましたが、
結局購入せずでした・・・(^_^;)
5月末に名品展と阿修羅2回目を鑑賞しましたが、
そのときに西美の前庭をちょろっと覗くと凄いことになっていました。
待ち時間が無ければ2回目をと思ったのですが・・・(^_^;)
by りゅう (2009-06-22 23:11) 

りゅう

○kiyoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2013-03-31 01:31) 

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